第四話  運命は優しくないが夕日は優しかった

 

 


流川と一緒に住んでることがクラス中にバレた!
僕の予想を大幅にはずれたスピードでバレた!
いつかバレるとは思っていたがまさかたった一週間でバレるなんて・・・。噂ってモンスターはかなりのスピードを持っているらしい。
フィギアスケートの回転速度!?そんなもん目じゃないぜ。
音速・・・いや、光速と同レベルかそれ以上のスピードだ。
つまりとにかくチョ〜速いんだ!そんなこんなで今僕の居場所は屋上。逃げてきたわけだ。
そりゃぁ誰だってそんなことがバレたら逃げたくなる。
「これじゃぁ、午後の授業は出れないな」
おそらく流川も恥ずかしくて出られないな。
さっき教室を走って出ていくところが見えたからな。

第一住みたいって言い出したのは流川の方だったはずだ。
「流川のバカ野郎が!」
僕は誰に言うでもなく呟いた。
だが、それは一番聞かれたくない相手に聞かれていた。
「悪かったはね。バカで!」
後ろからすごいどすの効いた声がしたと思ったら左から平手うちが!!
「おっと!」
僕は避けた。間一髪で・・・。
「な、何するんだよ!?」
「あんたがバカやろうなんて言うからよ!平手一発で済むだけマシだと思いなさい!」
そんな理不尽な・・・。
僕の心の中の呟きは無意味で今度は蹴りが飛んで来た。
だけど僕もそんな攻撃ぐらいは予想出来ていた。
避けた。
するとどうだろう・・・。
バランスを崩した流川は僕に倒れかかってきた!
支えようとしたらぶっ倒れた。
どうなったかというと
僕は流川に押し倒された。
流川は僕を押し倒した。
第三者が見ればすごい青春の1ページだが本人達・・・この場合僕と流川のことだ。
「あ・・・・・・」
「え・・・・・・」
ぼくたち二人は恐らく顔を真っ赤にして固まっていたと思う。
初めに動いたのは流川だった。
「ご、ごめん。大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫だけど」
流川は顔を背けて手すりの方へ行った。
たぶん、照れてるみたいだったと思う。
僕もそれを追って流川と並ぶように手すりによっかかる。
やはり流川は頬を赤らめていた。
僕達はしぱらくの間何もなくただ見える景色を眺めていた。
ここはけして絶景とは言えないが眺めは十分だった。
不意に流川が僕に話しかけてきた。
一瞬焦ったが怒ってない普通の声だったのですぐに落ち着いた。
「あのさ、あんた言いふらしたでしょ?」
「何を?」
僕は分かっていたがわざと聞き返した。
理由は・・・ちょっと困らせたかったから。

「何をって・・・その・・・・・・」
また頬を赤らめていた。
悔しいがこういうときの流川はとてつもなく可愛い。
「そ、それは・・・あ、あの・・・私があなたの家・・・金星で住んでるってことを!」

やっぱり・・・。
最後の方声が裏返っていた。
やっぱりこういうときだけは可愛い。
100人に「可愛い?」と聞いたら99人が可愛いというだろう。その一人はなんなんだって?

う〜ん、いわゆる物好きってやつだ。それかフェチを持っているやつだ。

「言いふらすわけないじゃないか!普通に考えてクラスにバレたら浮く原因になるに決まってるだろ!」

「そ、それは……」

「それにあの女子たちの話からしてお前が金星に入るのを目撃されたそうだ。つまり責任はお前にあるだろ?」

「うぐっ…」

初めて流川に口げんかで勝った!

「ごめんなさい……」

えっ……?

今流川が僕に謝った?

嘘だろ?

絶対にありえないことだぞ。地球が一日に二回転するぐらいありえないことだぞ。

「え……えっと……」

お、落ち着け柳沢月斗!!

何も告白されているわけではないのだ。冷静に対処しろ!

「その……誤ることないんじゃない?……ただ、クラスに知れ渡ったってことだけだろ?」

「で、でも!……それはそれで…」

「まあ、確かに居心地は悪くなると思うけどそれもたった一週間程度!たぶん、一週間以上もその話題は続かないと思うよ。だから元気だせ」

僕は背中を元気を出す感じで優しく叩いた。

僕が教室に戻ろうとしたとき一人の女性がドアのところに立っているのに気づいた。

「誰だ?」

僕はその女性に問いかけた。

「ふふふふふ……私よ、私!」

いや、私で分かったらニュータイプとかマリックとかマギー真司とか(これは違うか)の仲間入りできちゃうから……。

「私よ……山三重(やまみえ)かおり!……どう、思い出した?」

その女の子はここの学校の制服に身を包み髪をショートカットにした少し目がするどい。だが、顔だけ見れば綺麗の部類に入るのだろう。

あっ言い忘れていたが流川の髪は結構長い。

「あ〜!!!……って…な、なんでお前がこんなところに!?」

ああ、確かに見覚えがあったよ。

しかし、ニュータイプの仲間入りは不可能らしい。

彼女は僕がまだ東京に両親と住んでいたときの友人だったかおりだった。

「柳沢、知ってる人なの?」

「ああ、僕とおない年でこっちに来るまで東京にいたときの友人だよ。でも、何でこんなところに?」

「急にパパの転勤が決まったの。それでここに引っ越してきたわけよ。明日からこの学校の月斗と同じクラスだと思うから、よろしくね!!」

最後はおそらく脅しで言っていただろう。

あくまでも予想だができればはずれてほしい。

僕の周りにはまたストレス要因が増えたということになる。

僕はきっと早死にするだろう。

原因は100%ストレスだな…。

そうそう誰かと同じく通常の三倍で死ぬだろうな…。

誰だっけ?

 

続く(えっ…?)